筋肉の声を聴く ー体温を測るように筋肉を測るー 筋肉疲労検出のための表面筋電図システムの開発
神奈川大学 人間科学部人間科学科 衣笠竜太教授
ヒトアキレス腱湾曲の基本原理や人足底腱膜の収縮中の3次元変形動態などを中心に研究。
https://muscle.kanagawa-u.ac.jp/
身体能力の可能性を追い求めて
衣笠先生は、謎多きアキレス腱の動態の仕組みを、生化学、解剖学、スポーツ科学など、多視点で解き明かそうと研究活動を進められています。ヒトの四足歩行の可能性の探求により「2048年、四足歩行が100メートル走の世界記録を塗り替える」という論文を発表し、世界的な反響を呼んでいます。
いつでも、どこでも、誰でも簡単に筋肉の質の見える化を。筋肉の動きを電気信号に。そして筋肉を語らせ声を聴き取るプロジェクトが始動。
ヒトの健康状態を筋肉の運動機能から検知することに取り組んでおられた衣笠先生の研究は、未病から予防、疾患の早期発見、治療のサポートまで、幅広く活用が期待されるもの。
幅広い研究のなかから、筋肉の活動のリアルタイムな「見える化」と「知らせる化」双方を実現する筋肉アラート装置の着想をお聞きし、社会課題の解決に対する幅広い可能性を理解することができ、当財団も伴走支援をいたしました。
構想設計を担当する企業の探索とパートナーリング、産学連携による研究資金の獲得、アーリーアダプターへのアプローチ、大企業とのアライアンス検討、大学発スタートアップ設立の検討など、プロジェクトが走りはじめました。
筋電位センサー“筋肉Phone”の誕生
プロジェクトの起動をブーストしたLIP.横浜トライアル助成金による助成を契機に、装置の小型化、操作性、ソフトウェア開発など多くの課題を乗り越え、プロトタイプが完成。2021年12月に、「筋電位検知器及び筋電位検知システム」として特許を取得(特許第6964355号)。
2023年1月には、電気・情報工学分野の査読付き論文誌「IEEE Access誌」に論文”Development of Consumer-Friendly Surface Electromyography System for Muscle Fatigue Detection”が発表されました。この論文のなかで、当財団によるこれまでの伴走支援に対して謝辞をいただきました。
“筋肉Phone”は、効率的なトレーニング、スポーツパフォーマンスの向上といったアスリートだけでなく、フレイルの検知と予防、糖尿病の早期発見、認知機能低下の抑制などに用いられることが期待されています。
当財団はこれからも人々のウェルネス、ヘルスケアに貢献する研究のサポートを続けます。